娘の絵の具を買いに行く
『デジタルクリエイターズ』というメールマガジンを、もうずっと購読している。その中の連載で、笠居トシヒロさんとまつむらまきおさんの対談がある。で、2年前の以下の記事を読んだと思し召されよ。
小学校の絵画教育で不透明水彩を使うのは間違っている。透明水彩が良いんじゃないかと書いてある。このコラム、面白いから後編も引用しておこう。
読んで俺はハタと膝をうった。
そういえばガキの頃、水彩画の授業にはいい思い出が全然ない。塗っていくうちに汚くなっちゃって、直そうとすればするほど悲惨になる。そのうち紙のダマみたいなのが出て、もう目も当てられない。なるほどそうか、あれば絵の具が悪かったからで、俺に絵の才能がなかった訳じゃなかったのか! まあ幸福な誤解も一部あるかもしれないが、笠居さんとまつむらさんに、思わず手を合わせたくなったのです。
とはいえ、四十を過ぎて今更絵を描くことに目覚めるでもなく、そのまま脳みその奥深く記憶は仕舞い込まれておったのですが、小学校1年の娘が絵の具セットの共同購入の申込用紙を持ってきた時から、この話は復活するのです。
奥さんに「これさー、透明水彩の方が良いんじゃないかな……」と持ちかけたら、えらい勢いで同意する。曰く自分は昔から不透明水彩がどうして存在するのか理解ができなかった。あんなものはこの世になくていい。色も汚いし、扱いが大変むずかしい画材で良いところがない。やっぱり子供に使わせるなら透明水彩よ。
なんだ、笠居さんとまつむらさんと寸分違わぬ事を言っている。やっぱ大阪人だから? でもプロが言うんだから確かだよな。そんな訳で娘を連れ、今日世界堂本店に絵の具セットを買いに行ったのです(奥さんはいい年して一人でオンリーイベントに行ってたというのはナイショ)。自分の子供には、やはり画材と幸福な出会いをしてほしい……なんちゃってね。
だけど、結論から先に書くと、負けましたよ、不透明水彩のセットを買って帰ってきました。以下、世界堂で1時間にわたり呻吟し尽くした結果。ああ疲れた〜。
- 透明水彩はめっちゃ高い。
- 透明絵の具のセットは学校用のと内容が違う
- その3,000円ちょっとのセットを持ってレジまで行きかけて、ふと胸に暗雲が。ちょっと待て、学校用のと比べてみよう。で、左右に並べて分かったこと。透明水彩のセットって、大人向けなんですね。たとえば灰色がない。当然ですよね、絵を描く人間なら灰色なんて自分で調合しますよ。でも、子供って、まだ絵の具が調合できることを知らないんです。その点、学校用の不透明水彩のセットはさすが。分かりやすい典型的な色ばかりキッチリ揃えている。
- どうしよう、少なくとも今買おうとしているターナーの24色セットは諦めるしかない。そうだ! バラで学校絵の具みたいな典型的な色ばかり揃えればいいんじゃない? あたしってあったまいい! ところが……
- 透明水彩は微妙な色彩はあっても典型的な色は少ない
- 例えばゆで上がったばかりのほうれん草みたいな緑。プールに塗られているような水色。こういう分かりやすい、大人なら使うのをためらうような典型的な色がない。ちょっとくすんでいたり、微妙に黄色がかっていたり「上品な色」ばかり。どう探しても学校用のセットとコンパチにならない。ダメだこりゃ。この期に及んでいよいよ透明水彩を諦めるしかなくなった。じゃあ色数だけでも標準より多めの24色セットは堅持しよう。ところが……