「障害」と「障碍」について(追記あり) 

ちょっと心配していたのですが、夜が明けたら「やっぱりね」という感じ。前日のエントリですこしふれた「碍」の字についてです。


この記事の以下の部分。

「碍」の追加希望は20件。「障害」は戦前は「障碍」などと書いたが、「碍」が当用漢字にならなかった戦後、「障害」への書きかえが定着した。しかし近年、「害」は負のイメージが強いとして、行政文書などで「障がい」と表記する自治体が相次いでいる。今回、まぜ書きは不自然で読みづらいので、本来の「碍」を使えるようにすべきだという意見がみられた。

上記のうち、「「障害」は戦前は「障碍」などと書いた」はウソです。戦前から「障害」「障碍」の両方の表記がありました。当用漢字表は制限表ですから、これにより「障害」への書き換えが進んだのはおそらく事実でしょうが、だからといって「障碍」が古く、「障害」が新しいとはできません。「障害」は明治25年勅令に遡ることができる表記です。典拠として前日も引きましたが、ブログ『小川創生@檸檬の家』における調査を挙げます。小川さんのご尽力に感謝いたします。

朝日新聞の記者氏は、ぼくなどより以前から漢字小委員会の傍聴を重ね、じつにしっかりとした報道をされてきたと思っていましたが残念です。俗説に流されず、まず事実を確認していただきたかった。朝日新聞は訂正をするか、さもなければ〈「障害」は戦前は「障碍」などと書いた〉の論拠を示すべきではないでしょうか。

また、前日は書きませんでしたが、林史典副主査が審議の場で言った以下の言葉を記録として残しておきます。

  • 「これは共通理解として確認した方がよいと思うが、仮に「碍」の字を入れることにしたとして、この表(新常用漢字表)としては、これからは「障害」でなく「障碍」にしてくださいとは言えない。常用漢字表としては、そういう字も使えますよというだけです。もしも「障碍」という表記は使いたくないという団体があったとしても、その字(碍)を押し付けるわけではないわけです。表の字の出し入れというのはそういう意味であると、いうことには理解しておく必要はあるだろうと思います」

じつに常用漢字表の性格を踏まえた考えというべきだと思います。

※追記:小川さんのブログでは、以下のエントリをまず引用するべきでした。

「障害」の用例がどこまで遡るかという意味で上述の明治の法令にも「障害」の用例あり…むしろ「障碍者」こそ新語を引用しましたが、「障害/障碍」全般については、このエントリが施策、辞書、文学作品の諸用例を渉猟しており、行き届いた調査となっています。