落とし所は三部首許容?

12月16日に第29回漢字小委員会が開催されます。年内開催はここまで。「国語分科会及び漢字小委員会の開催日について」に明らかなように、国語分科会は来年1月27日に開催され、この時に試案(中間答申)を出さなければなりません。となると、残された審議は次回と1月16日。予備日として1月20日を確保してありますが、残りが僅かなことは変わりません。

つまり、次回には字体について結論を出さないと、1月に答申の全文を固められないわけです。一方で、11月30日のエントリで書いたとおり、前回は日本新聞協会からだめ出しがありました。つまり、現在の案では我々は呑めないと。

審議会が親睦会でないのは当然ですが、真理を追究する場でも権威を発揚する場でもありません。大きな目的は利害の調節です。利害が衝突するテーマについて、当事者を一堂に集め、全員が呑めるような案を調整してひねり出す、これが審議会です。教育界は呑めると言っています。不思議なことに日本文芸家協会は沈黙したまま。まあ何も言わない以上、呑めるのでしょう。いわゆる康煕字典体が基本なのですし、文句はないはず。ところが日本新聞協会は呑めないと言っている。ということは、次回、何らかの妥協案が出ないと収まらないことになる。では、どんな案か?

個人的には落とし所は三部首許容ではないかと思っています。許容という曖昧さをふくむことで、現在より字体規範としての権威は大いに揺らぎますが、考えてみると対応可能な現実的アイデアは限られています。

表外漢字字体表では、答申の直前、日本新聞協会への妥協として三部首許容が追加されました。標準とする字体の他に、現に使用している場合に限りしんにょう、食偏、示偏の三部首を許容する。これが今回も妥協案として出されるのではないでしょうか。もちろん、3つのうちのどれか、例えばしんにょうだけということも考えられます。

とはいえ、表外漢字字体表はあくまで表外漢字の規範。今回は表内字の規範ですから、素直にそのままでは通りづらい。おそらく異論は出るでしょう。しかし、このくらいしか落とし所が思いつきません。

かつて表外漢字字体表の時には、特定の字について特定のデザイン差を認める「個別デザイン差」という考え方が導入されました。これにならって「個別字体差」を認めるという案も考えられます。たとえば「遜」だけは一点も二点も標準と認めるということ。しかし、デザイン差を同じとするのは通りますが、一点と二点の違いは字体差です。異なる字体を同じ標準字体と認めては、字体規範になりません。JISじゃないんだから、あまりに筋が通りません。まだ三部首許容の方が一貫性がある。

個人的には三部首を許容するなら、一点の有無をはじめ他にも許容すべきものが沢山あると思うのですが、さて、どうなるのでしょうか。刮目して見守りたいと思います。

以上、かなり走り書きですので、間違いがあればご容赦を。