Googleが携帯電話の絵文字をUnicodeに提案

漢字小委員会の模様について、たくさんの皆さんに興味を示していただいたようでありがとうございます。つづきは時間を見て書きます。まだ皆さんにお知らせしなければならないことは残っている。

今回はまた別のお話。国際化の世界でよく知られているエンジニア、風間一洋さんのブログで「携帯の絵文字のUnicodeへの収録」というエントリが公開されました。これによると、Googleが携帯電話の絵文字をUnicodeに提案しようとしているそうです*1



非常に興味深い動きです。このエントリでは「もうすぐ日本語訳(?)を公開するそうである」とされていましたが、すでに公開されています。仕事が早い。

ご存知のように、携帯電話での絵文字は、ドコモがiモードで成功した要因の一つともされ、とても多くのユーザーに愛用されています(ぼくも夫婦間のメールではよく使います。話が早いので)。一方でわれわれが使っている携帯電話はシフトJISを採用しているものが大半であり、絵文字は外字領域に各社バラバラに符号化されています。今は各社間で共有されたサーバ上の変換表を通す仕組みが運用されていますが、数年前までは絵文字をキャリア間のメールに使うと文字化けしてしまいました。

いかにメモリ容量が限られた携帯電話とはいえ、未来永劫シフトJISにこだわっていられないことは自明でしょう。かなり前から遠目のきくエンジニア達の間では、日本のキャリアや携帯電話メーカーはユニコード・コンソーシアムに加盟して、絵文字のUnicode収録をすすめるべきとの声が聞かれました*2

結局、いつまでたっても日本の会社は動かず、日本での携帯ビジネスに本腰を入れようとする外資により状況が変わろうとしていることは、皮肉以外の何者でもありません。ここでもまた黒船の比喩が繰り返されることになったわけです。

つい最近、iPhoneがバージョンアップにより絵文字が使用可能になったことが大きな話題となりました。しかし話題になったのは日本だけではありません。かつてマイクロソフトWindows 95のチーフアーキテクトだった中島聡さんのブログに、「"emoji" (絵文字) の "emo" が "emotion" の "emo"だという誤解」というエントリがありました。これなどを読むとiPhoneのおかげで海外でも絵文字が少しずつ浸透しつつあることが分かります*3

もしかしたら今回の絵文字のUnicode提案の動きは、後から考えると大きな結節点となるものなのかもしれません。そのためにも現に日本で運用されている絵文字と矛盾のない提案が必要です。風間さんも呼びかけていますが、日本の関係各社はGoogleの動きに主体的に係わり、正しいフィードバックを返すことが望まれます。

*1:ただ、風間さんが「この案は,将来的にISO/IEC JTC 1/SC 2に提案することになると思われる.」と書かれている点については、そうとも限らないのではないかと思います。Googleはれっきとしたユニコード・コンソーシアムのフルサポートメンバです。UCSに提案して時間をロスしなくても、UTCに持っていけば簡単に通るはずです。もっとも知己の多い風間さんのことですから、なにか情報をお持ちなのかもしれませんが。

*2:たしかソニー・エリクソンだけは加盟していたと記憶します。

*3:ちなみにUnicodeで動作するiPhoneは、絵文字をPUA(Private User Area)にマッピングしています。http://creation.mb.softbank.jp/web/web_pic_01.html フォントはHelveticaのだとか。