アンダマンで何がおこったか?

僕も元日のウィーン・フィルのコンサートは、毎年楽しみにしているくちだ。去年は楽しめなかったラデツキー行進曲も、今年はちゃんと聞けたし。あれ、そういえば去年はなんでやらかったのだっけ?



しばらく思い出そうとしたが、飲んでいたせいもあって、どうしても思い出せない。なにか事故とか災害があって、その追悼のためだっただったんじゃなかったっけ? すると奥さんが、インド洋の津波だよと教えてくれた。ああ、そうだった、ものすごい数の人達が海に呑まれてしまったあの津波、あれは一昨年の年末ギリギリだったんだ。あの津波はタイ、スリランカ、インド、インドネシア、マレーシアなどインド洋沿岸各国を軒並み襲った。22万人以上が死に、数十万人が現在も避難生活を送らざるを得ない状況にある。


ラデツキー行進曲は、ニューイヤーコンサートの中でも例年最後に演奏される。拍手で演奏に加わる聴衆が楽団と一体になって、最高に盛り上がる。もちろんブラウン管のこっちだって、ここぞとばかり拍手するさ。ウィーン・フィルは、インド洋の災害から5日しかたっていない時点であるにもかかわらず、その最高に盛り上がる演目を放棄するというやり方で、彼等なりの弔意をしめしたのだった。なのにお気楽なヤーパン(僕のことだ)は、もう忘れてしまっている。


タイで大きな被害をこうむったアンダマンの現場に、プレスの通訳として入った白石昇さんが、その時の経験を自分のメールマガジンに、ぽつりぽつりと書いている。

 (発行元が違うだけで、どちらも同じ内容です)


彼のホームページをみれば、ジャーナリスティックに何かを訴えるタイプの人ではないことは分かると思う。白石さんは強く望んだわけでもなく、タイ語に堪能な在タイ日本人というだけで、半ば否応なく状況に巻き込まれていった。そしてそれが終わった後で、誰のためでもなく、自分の見たものを書かずにはいられなかったんだろう。その意味で、これはとても純粋な文章だ。


津波の報告は、災害の直後から始められたけれど、どんな理由からか夏の数ヵ月、メルマガ自体が発行しなくなっていた。それが秋頃から発行再開されるようになった。もしかしたらあの体験を文章にするには、ある程度の時間が必要だったのではないだろうか。再開されてからは内容の衝撃度は高まる一方。なのに書く本人の声は決して高くない。それがまさに鬼気迫るといった感じで、こればかりは読んでもらうしかない。僕は読む度にメメント・モリって言葉が脳裏を横切ります。


一人でも多くの方に、メルマガの購読をお勧めする次第です。