著作権者がブックデザインをする意味

こうしてみると、この本においてデザイナーである私が立っている場所は、ずいぶんとお気楽な地点であり、まったくいい気なもんだね、うらやましいよ、そのようにあなたは思われるだろうか。

でも違うのだ。原稿書きに行き詰まったというだけでデザインは始められない。普通デザイナーは自分がデザインした本が売れなかった場合も、責任を問われることはない。せいぜい次の仕事が来なくなる程度だろう。しかし私は著作権者でもある。好むと好まざるとに関わらず、この本が売れるかどうかは、我が社の(というか我が家の)財務状況に直接的に影響してしまう。


もうすこし説明すると、この本のテキストは週刊アスキーに6年にわたって連載が続いているもの。当然1巻だけでは収まらず、今まで描いた分だけでも単行本5巻になる。本当に5巻も版元が出してくれれば我が社も安泰、左団扇だが、そんなにうまい話がある訳がない。

この作品はジャンルで言うとは読み切りエッセイマンガに入るが、この手のものの場合、続刊を出せば出すほど売れ行きは落ちるのが普通。1巻よりも5巻が売れた、なんてことはまずありません。したがって版元も相応に慎重になる。この本の場合、2巻までは出してもらえることに決まっていた。でも、その先は神のみぞ知るってやつ。

いったん出し始めたら最後まで出すのが出版社の良識、なんて美しい話は今時誰も信じない。だからそこでは、きちんと数字を出すことが絶対条件となる。デザイナーに課せられた責任は重い訳だ。