なぜブックデザインをするのか?

この単行本のデザインをすることになったのは4月くらいではないかと思う。当時(いや、今もだけれど)私は相当煮詰まっていた。ずっと続けている文字コードの連載は、原稿を書き続けているにも関わらず新しい原稿を配信できない。この状況は今も続いていて、この夏には腱鞘炎になってしまった。手を悪くするくらい原稿を書いているのに、いったいどうして原稿を完成できないのだろう? もちろんすべては身から出た錆だ。

原稿書きの他にも、いくつか結構な意気込みの元に関わったプロジェクトもあるけれど、いずれもまだ世に出ないままだ。もしや自分は能力のない、世間に不必要な人間ではないかと、わりと深刻な自己不信に陥っていた。


ここ数年、私はひたすら文字のことばかり勉強してきた。もしもそれが少しでも意味のあることだったとしたら、原稿を書く以外にもその成果を他のジャンルで発揮できるのではないだろうか。そう思っているところに、この単行本の話が具体化し、かねてブックデザインに興味のあった私は、半分逃避先を求めるように自分にやらせて欲しいと手を挙げた。

したがって、この本で私が最初に考えたデザインの「肝」は文字ということになる。しかし、この本はマンガなのだ。なのに、どうして文字をモチーフにできるのか? そういう話はもうちょっと後でしよう。その前に説明しておくことがある。