第42回国語分科会が「改定常用漢字表」を承認

本日、午前10時より文科省庁舎にて第42回国語分科会が開催、ここで正式に「改定常用漢字表」が承認されました。これをうけて文化庁は2回目のパブリックコメントを今月中に開始することを発表しました。
パブリックコメントは、1ヵ月間受け付けられ、そこで寄せられたコメントは、来年1月15日に開催される漢字小委員会で審議されます。試案はそこでの修正をへたのち、春に最終答申となり、秋に正式に告示される予定です。

当日配布された資料は、小熊さんのページから入手可能です。ここにはパブリックコメントの対象になる「「改定常用漢字表」に関する試案(案)」もふくまれています。

その内容自体は、以前のエントリで報告した通り、10月23日開催の漢字小委員会での決定を、試案として1冊にまとめた内容、つまり現行の常用漢字表1.945字から5字を削除、196字を追加するものです。したがって、詳細はこのエントリをご参照ください。

さて、会議の終わったあと氏原主任国語調査官にいくつか疑問をぶつけてみました。まず、10月23日の漢字小委員会では明確な追加理由が述べられなかった「柿、釜」の2字について。これが追加された理由は、日本新聞協会が定めた新聞常用漢字であること、追加要望が多かった*1ことの2点です。なお、「柿」については「牡蠣」と書き分けられることもあるとのこと。

この2字については、Unicodeさん(漢字・韓国語・中国語が好きな福岡人)が「常用漢字の見直し」というエントリのなかで〈日本新聞協会に対する配慮だろう〉と分析されています。たしかに当時は新聞協会出身の金武委員が、1点しんにょうを漢字欄に掲げる強硬論を主張しており、矛を収めてもらう妥協材料として新聞常用漢字を追加するというのは、いかにもあり得る話です。そもそも字種の審議は夏頃に終わっているはずで、今になって新たに字種追加が発表されたのは、ちょっと不思議なタイミングと言えます。

これについて「金武委員との取引材料として追加したのか」と重ねて聞いたところ、明確に「それはない」とのことでした。まあ、このようにストレートに聞いて、そうだと答える官僚はいないでしょうが、何事も聞かないことには始まらない。
説明としては、今期の審議ではたしかに字種、音訓、字体とテーマを分けて審議しており、字種の審議の段階でこれらの字種追加の話がなかったのは事実だけれど、しかしそれは委員から追加の声が出なかっただけのこと。それまでの審議をふまえて漢字ワーキンググループとして総合的な変更案を出したのが36回(9月8日)、37回(10月23日)であり、これら字種の追加はそうした流れで出したものだとのことでした。

もう一つ、これは微細な話なのですが、気になっていたのは試案で山つき括弧〈 〉が使われず、不等号<>が使われていることでした。一般の人はともかく、出版関係者であれば多くの人が気になると思いますが、これは意図的なものでした。多くの山つき括弧のグリフが角度の浅いものであり、これにより丸括弧とまぎれることを恐れ、そこで不等号を使ったとのことでした。


ところで、この日の国語分科会は、上に述べた他に日本語教育小委員会からも報告がありました。大量の外国人が来日して就労している現状の中で、彼等にどのように日本語を習得してもらうかは、まさに焦眉の急といった大問題。これに対処すべく、かなり具体的なカリキュラムをゼロから構築している模様です。
これは非常に重要なテーマだと思うのですが、前半の改定常用漢字表の審議が終わった途端、記者と思われる5〜6人の傍聴者が一斉に退場し、その後も帰る人が絶えず、最終的に40人近くいたうち半数に近い傍聴者が帰ってしまったのは、ちょっと意外でした。とても面白い問題だと思うのだけれど。これについては、小熊さんが突っ込みをいれたい様子だったので、その反応を待ちたいところ。

*1:ちなみに、以前の配布資料「意見募集で寄せられた意見(追加及び削除希望字種一覧)」によれば、「柿」は第4位(要望8件)、「釜」は36位(同5件)。