1億人を代表して、皆さんにお願いします。


本日はWG 2東京会議の2日目、午前11時から昼食をはさんで午後4時まで、Emoji Ad-Hoc会議が開催され、その場でぼくたちが提出した「A Proposal to Revise a Part of Emoticons in PDAM 8」(N3711)が審議されました。

その冒頭で、趣旨説明をしたわけですが、その草稿を公開します。これは開会直後に趣旨説明が必要であることが分かり、会議の最中に即席で書いたものです。内容的にはN3711のサマリーになっています。

本来なら英語でスピーチするところですが、ぼくにはとても無理。そこで日本ナショナルボディのご好意により、関口委員長自ら通訳してくださいました。まだるっこしい日本語の話を辛抱強く聞いてくださった各国ナショナルボディの諸氏にも深く感謝。


私達は日本の携帯電話ユーザーとして、UCSが絵文字を収録することを支持します。

それは日本での絵文字の使い心地が、とてもpoorだからです。日本では友人に送った絵文字がアスキーアートやゲタマークに変わってしまうことは、よくあることです。

これは日本の3つのキャリアの絵文字レパートリがasymmetricity(非対称的)だからです。キャリア各社は、ユーザーを獲得しようとして、それぞれバラバラに絵文字レパートリを拡張しました。

もしも絵文字がUCSに収録されれば、キャリアが共通の文字セットをサポートする可能性が生まれます。

残念ながら、キャリアが本当にそうするかは分かりません。しかし、UCSに収録されなければ、今のようなpoorな使い心地が続くことも確かです。だから私達はUCSの絵文字収録を強く支持します。

ところがPDAM8には、いくつか日本の絵文字とsemantics(意味)が変わってしまっているものがあります。とくにそれはEmoticonにとても多く見られます。

例を挙げましょう。私達の提案書の12ページ。一番上(1F611)を見てください。この文字のSourceは左端のNTTドコモで、他の2社はいずれもFallback Mappingですから無視します。NTTドコモの文字名は「hiya-ase」、「Cold Sweat」です。つまり、この文字は、笑いながら冷や汗を流しているという絵文字です。

そこでPDAM8のEmoticonを見ると、これは目から涙を流しているように見えます。これでは元のSourceから文字のsemantics(意味)が変わってしまっています。

もしもこのPDAM8がAMD8になり、それにもとづいてGoogleAndroidAppleiPhoneが絵文字を実装すれば、日本の携帯電話と情報交換した場合、文字が化けることになります。それは、日本の携帯電話ユーザーとして、大変困ります。

 信頼できる調査によれば、日本の携帯電話は1億人以上のユーザーがいます。私はこの1億人を代表して、賢明な皆さんに、文字化けをおこさないようにUCSに収録するよう、お願いします。


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1億人とは、なんとも大きく出たものですが、こういう時はその程度でちょうど良いだろうと思って言ったもの。

審議の結果としては、数文字を除いて我々の提案したグリフ変更は受諾されました。残りについては明朝、あらためて審議されます。また、文字名とマッピングの変更については、次回会議の審議となりました。

正直なところ、大声で机を叩くような反論がくることも覚悟していましたが、フタを開けてみれば特に強い反対もなく、比較的すんなり通ったという印象。まあ、これはかなり素晴らしい結果ではないかと思います。

まだ明朝の審議を待たないとぬか喜びはできませんが、ひとまず皆さまの応援に心から感謝したいと思います。