『活字印刷の文化史』について

この本が出たのはゴールデン・ウィークの頃ですから、もう3ヵ月を過ぎますか。本来であれば共著者の一人として、本書を紹介し、広く勧めるべきところでした。


活字印刷の文化史

活字印刷の文化史

本書の全般的な紹介は、先日公開された、編者の小宮山博史さんの文章があります。


こうして読むと、あらためてこの本の凄味といったものが分かり、またそのような本に場違いな原稿を書いてしまったのではという自責の念にとらわれます。

本書収録の原稿は、昨年INTERNET Watchで連載した“情報化時代”に追いつけるか? 審議が進む「新常用漢字表(仮)」を全面的に改稿したものです。たとえば Unicode 正規化の部分などは大きく書き換えており、その意味からINTERNET Watch版の原稿だけで、すべてを判断されてしまうと困るところはあります。

この原稿は、じつは初めて完結させた長編でした。短い文章は別として、それまで連載を完結させた経験がなかったのです。これをどうやって終わらせればよいのか、のたうちまわっていたのがちょうど一年前の夏。あの吐き気がするほどいつまでも続く暑い夏は、これからもずっと忘れられないと思います。

それだけに、最後の一文を書き終えたときの、なにかスポッと突きぬけた奇妙な開放感は忘れられません。マクドナルド用賀インター店。お店の外の駐車場では「M」の看板がくるくる回り、その向こうに広がるのはすでに夏の空ではなく、どこまでも深い秋の青空でした。

まあ、そのような個人的なことはよいのです。その『活字印刷の文化史』の出版記念セミナーが開かれるという知らせを受けました。

「活字印刷の文化史」梓行記念セミナー

  1. 日時:8月29日(土) 午後1:30開場 2:00開会
  2. セミナーテーマ(司会:鳥海 修)
    1. 「用紙から見るキリシタン文献」 講師:豊島正之
    2. 清朝・楷書・正楷書の諸相」 講師:小池和夫/府川充男
  3. 開場:印刷博物館グーテンベルク・ルーム
  4. 費用;印刷博物館入場料 一般:500円 学生:300円が必要
  5. 開催者:築地電子活版/字游工房 共催

詳細は下記サイトをご確認ください。また当日の資料もサイトにアップされていますのでご面倒をおかけしますが、出力してお持ちいただければと存じます。
  http://www.tsukiji-type.co.jp/02/zusyo/zusyo_list.htm

この紙と印刷さえ怪しくなったご時世に、あえて梓行と銘打つのが泣かせます。さらに配布資料を自分でプリントして持参しろというのが府川さんらしい。それだけ自信があるのでしょう。

当日は勉誠出版誠文堂新光社、実践社、白順社柏書房、彩雲出版、三省堂の各社が出店を出し、多くのタイポグラフィ関連書籍が割引で販売されるようです。たとえば本書も定価10,290円のところを、8,200円で販売されます。ぜひ手にとってお確かめください。

仄聞するところによれば、豊島さんのご発表では長らくキリシタン版で謎とされたきたことについて、ある知見が披露されるかもしれないとのこと。大変楽しみです。