JIS X 0213は改正しないと新常用漢字表に対応できない?

書いておかないと忘れそうなのでメモ。
前日のエントリに対するUnicodeさん、mashabowさんのご指摘について調べるうちに、ハタと気づいたこと。


完全に見落としていたのですが、今までなんとなく「新常用漢字表」の「(付)字体についての解説」の「1 明朝体のデザインについて」は、表外漢字字体表におけるそれと下位互換だと思っでいたのですが、まったくの思い違いでした。

表外漢字字体表の「表外字だけに適用されるデザイン差について」(漢字使用の実態への配慮から、字体の差と考えなくてもよいと判断したもの)で挙げられていたものを、新常用漢字表はまったくふれていません。そもそも新常用漢字表における「1 明朝体のデザインについて」は改定されていません。

表外漢字字体表で挙げられているうち、新常用漢字表の追加字種に関わるものは以下のとおりです。

A 画数の変わらないもの

(2) 傾斜・方向に関する例


(3) 点か、棒(画)かに関する例

(5) その他

B 画数の変わるもの
(1) 接触の位置に関する例

C 特定の字種に適用されるもの

常用漢字表では、上記の記述が無視されています。つまりこれらは字体差と見なされることになります。

上記のうち「𠮟/叱」を除いて、JIS X 0213では包摂しています。今までいくぶんグレイゾーンはあるにせよ、おそらく新常用漢字表に対応するためのJIS X 0213改正は必要ないだろうと思っていましたが、ひょっとしてこれは包摂分離をする改正が必要になるのではないでしょうか? がーん……。

追記

なんか悪い予感が群雲のごとく広がってきているんですが、もう少し説明しますね。

まず上記に挙げたうち、「𠮟/叱」を除いた3字はJIS X 0213では包摂していると。ところが日本の言語政策の中心である常用漢字表が、これら包摂の範囲のうち、ただ一つ左側の字体だけを常用漢字であるとおっしゃる以上(ま、このこと自体は自然なことですが)、JISとしてはこれに対応せざるを得ません。国語施策に示された字体が正しく符号化できないことは避けられるべきだからです(というので答えになってます?>NAOIさん)。

ここで問題なのは対応の方法です。ちょっと考えただけですが、おそらく以下の3つだと思います。

  1. 3字体を6.6.3.2「漢字の字体の包摂基準の詳細」における「適用除外」に指定する。
  2. 3字体を現在の符号位置のまま、包摂範囲を適用しないことにし、3字体以外の字体をそれぞれ別の符号位置に追加する。
  3. 3字体以外の字体を現在の符号位置のままとし、3字体をそれぞれ別の符号位置に追加して包摂範囲を適用しないことにする。

どれもステキなことを起こりそうな予感が。①は現在の2004JIS例示字体に忠実な実装以外は、すべてJIS X 0213違反になります。まあ、果断と言えば果断。しかしまあJISはとうてい呑めないでしょうね。おまけに携帯電話などは「うちはシフトJISなんでJIS X 0213は関係ないんで」と言うかも。ごもっともです。しかし国民の9割が持っている情報機器が無関係となるような改定をしていいのかなあ。

②と③は、まあ前者の方が穏当かもしれません。しかし両方ともフォントの変更が必要です。おまけにどちらも非対応の環境とメールを送受信すれば字体が変わる可能性があります。もともと包摂分離は非互換変更だから当然といえば当然なのですが、本当にそれでいいのでしょうか?