第24回漢字小委員会が開催、字種に変更はなし

7月15日、午後2時より文部科学省東館にて第24回漢字小委員会がおこなわれた。


かねて7月いっぱいで字種を決定したいと文化庁担当者が語っていたことから、この日最終的な字種案が発表されることが予測されていた。

実際に配布された資料2「これまでの検討結果」(字種候補案)をみると、前回6月16日の第23回漢字小委員会で配布された「第2次・字種候補案」と若干の文言の修正はあるものの、字種そのものの変更はない。前田主査によると「ワーキンググループで検討した結果、変更の必要はないと判断した」とのことだ。

したがって以前から議論のあった「俺」も残った。文化庁の担当者からの説明によると、漢字表記による「俺」が平仮名、片仮名による表記よりも急激に拡がっている傾向が見て取れるとのこと。
日本語コーパスKOTONOHAでの調査によると、片仮名が頻度数426、平仮名が同2,078、漢字が3,409となっている。歴代の凸版漢字頻度数調査では(1)では1,077位、(2)が949位だったが、これが現代の(3)になると474位になる。この面でも漢字の「俺」が急激に頻度を増している傾向がみられるという(追記参照)。

こうした現状の中で、最近の男子大学生が「俺」の字をよく書いてくるが、中に間違って書いてくるのを見かけると笹原委員から報告があった。同委員によると、これは常用漢字表に入らないことで学習の機会が得られないまま、独自に習得して誤字として覚えてしまったものと推測できるとのこと。かえって表内に入れ、「俺」という私的な言葉の位置づけもふくめて教えた方がよいのではとのことだ。

この字種案について、漢字小委員会は満場一致で承認した。7月31日には上部組織である国語分科会が開催され、そこでこの字種候補案が報告される。今後は音訓の選定がすすめられることになる。ただし前田主査から、そこでの検討の結果によってまだ字種の出し入れがあり得ることが念押しされた。

以上、走り書きながらひとまずのご報告としたい。


追記

「漢字出現頻度数調査(1)」(1997年11月)及び「漢字出現頻度数調査(2)」(2000年3月)を調べた結果、双方が調査対象とした凸版の組版データの作成期間は、同じ1997年であると考えられることが分かった。

まず、前者には組版データの日付について記述はない。唯一扉に「平成9年7月31日」(平成9年=1997年)という日付はあるが、これはここに所収の凸版、大日本、共同印刷の3社ごとの調査に共通した日付で、組版データの日付といったようなものとは考えられない。

後者には若干詳しい「凡例」が付してあり、これによりこの調査の成り立ちを知ることができる。これによれば、後者の調査の目的は、前者の補完にあったとのことだ。

1. 本資料集は、主として以下の二つの理由で作成した「漢字出現頻度数調査(文化庁国語課、平成9年11月)を受け、これを補完するために作成したもので、(後略)

2-1-1 調査における基本方針
今回の調査の目的は「1.」で述べたとおり、前回の漢字出現頻度数調査を補完することにある。前回の凸版印刷調査を補う観点は以下の2点にあると考えた。
(1) 可能な限り最新のデータを用いること。
(2) 分野ごとの「書籍データ」のバランスをとること
 (1)は、前回の凸版調査では、調査対象漢字数を多くする目的で再版用の保存データをかなり用いたため、古いデータが相当数混じっていることを踏まえたものである。もちろん、再版する場合にはこの保存データを用いるので、現在の実態として読むことができるものではあるが、可能な限り最新のデータだけに限定して調査したいと考えた。そのために、今回の調査では、凸版印刷が平成9(1997)年中に作成した組版データに限ることを基本とした。ただし(2)の観点から、分野別の書籍データ量のバランスを考えて、平成7年、平成8年及び平成10年に作成したものも若干使用した。
 (2)は前回の凸版調査で分野として立てた「百科事典(県別百科)」のデータ量が他の分野に比較して、かなり大きかったことを踏まえたものである。(後略)


後者が前者を補完する意味で1997年の組版データを使用したのなら、帰納法的に前者は1997年のデータと考えることができる。

なお、〈「百科事典(県別百科)」のデータ量が他の分野に比較して、かなり大きかったことを踏まえた〉云々は、『漢字問題と文字コード』(太田出版、1999年)所収の直井靖「表外漢字字体表試案の読み方試論」を参照されたし。つまり、ここで指摘された調査の杜撰さを修正する目的もあり、後者の凸版調査が行われたと読むことができる。