シンカから回答をいただいた

昨晩、シンカにこれまでの簡単な経緯と、このブログのurlを明記した上で、「そちらのアウトラインデータと写研の写植は本当に同一のものなのでしょうか?」という質問のメールを出したら、今朝、早速丁寧な返事をいただいた。長いので失礼ながら一部を略して掲載させてもらう。


〈引用ここから〉


お世話になっております。
いただきましたご質問にお答えいたします。写研に関する弊社のシステムは、サッミズ及びsingisというハードとソフトを使用しています。当然ながら写研の純正システムで稼働していますのでご安心下さい。


今回、ご指摘いただいた文字のラインに関する事は弊社で確認できました。書体の字母そのものが、このようになっています。写研にもこの件を伝えました。写研の公式回答は、弊社に寄せられ次第お伝えします。


私見として述べさせていただきます。
私は、写植の時代から30年にわたり書体のビジネスに携わってきた者ですが、写植文字とデジタルフォントは、基本的にその組成そのものが違うという事が原因ではないかと考えます。


写植文字の字母は、写研が電算写植用の字母を開発する際に従来の写真植字機(手動機)の文字盤を元にデジタル化されたものが電算写植機であるサッミズ及びsingisに運用されています。その移行(デジタル化)される課程で必ずしも手動機の文字盤の字母を再現していると言えない箇所(書体によって)もあります。また、アウトライン生成を抽出する級数は70級を基本にしていますが、字母そのものは級数によっても異なります。


これは、デジタルフォントの組成方法と明らかに違う点で、写植書体は、1書体を構成する為に級数毎にも作られているという点にあります。今回の「日記」という字母を70級で確認いたしましたところご指摘のようになっています。


写研の公式見解を待ちますが、写植書体はデジタルフォントに慣れた方からするとパスの多さやラインの不正確さが見受けられるのも事実です。現在のデジタルフォントは、コンピュータ処理で作っていきますからラインの歪みを意図なく歪ましたりする事はありませんが、写植文字の字母は、手書きのものを基本として作られていますからこのような事があっても不思議ではありません。

(中略)

写植文字は、1文字1文字が手書きで作られたという事を考えると気の遠くなる作業だったのだろうなと思います。ご指摘の文字があえてラインを歪めたのかどうかわかりませんが、人間の業の緻密さと人間らしさが見えたような気がして何となくデジタル全盛の時代にあってほっとした気持ちになりました。


弊社の現時点での見解とさせていただきます。


株式会社シンカ
代表取締役 野口 淳

〈引用ここまで〉


僕なりに要約させてもらえば、「シンカでは写研の電算写植システムをそのまま使っており、そこでの元データを確認したが、たしかに斜めに切る処理はされている。ただし、手動機から電算写植に変換する過程でなにか変わった可能性もなくはないので、ただ今写研に確認中である」ということになるだろうか。


そして、ありがたいことに野口社長から直接電話をいただき、かさねて説明をしてもらった。それによれば、この斜めに切る処理はゴナUにだけされており、ファミリーのゴナE等にはされていないそうだ。となると手動機の「日」と「記」がどうなっているのか気になるところだが、そこのところは写研に問い合わせ中ということのようだ。


なお、メール文中にある「字母そのものは級数によっても異なります」という部分、これは写研における電算写植のデータの持ち方についての話で、ここでは出力されるQ数によりパスの数が数種類あるのだそうだ。じつは20Qのデータならずいぶん安くできるのだが、シンカではあえて70Qのデータを提供しているとのこと。このあたり、いつも大きく使うとは限らないので、小さくしか使えないけど安いというオプション料金を設定してくれればいいのになあ、と呟いておこう。


話はもどるが、本当に電算と手動機で違うのだろうか? 「日」と「記」という、常用漢字表はおろか学年配当表の1年生と2年生という高頻度の文字でこんなことがおこるなんで。とくに「日」は国号の字だから、たぶんどんな頻度調査でもベスト5には入るような字なんですね。なぜ今まで誰も指摘しなかったのだろう……。


手動機と違うということになれば、写研が修正することも考えられると野口社長は言っておられたが、「みつえ日記」の第2巻は1月の作業なんだよなあ。どうしようかなあ……。