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- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: ブッキング
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
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このブッキングという出版社は、「復刊ドットコム」というサイトを運営していることで知られる。こいつがなかなか侮れなくて、一回ここで買うと毎週届くようになるメールマガジンを読みはじめると、あら不思議、二回に一遍は何かしら本を買ってしまうことになる。
この本も、そうして買った。つまりこれは復刊本だ。今まで何度も復刊ドットコムで本は買ったことはあったが、ブッキング自体が復刊した本は買ったことがなかった。
届いて最初に気づいたことは、復刊なのに初出が明記されてないこと。これはおかしい。思わず以下のようなメールを出しちゃった。
貴社出版にかかる『戦争の法』を買わせてもらいました。これから読むのが楽しみです。ところで、帯で「復刊」を謳うこの本の初出表示が見あたらないのは、どういうことなのでしょう。これは「出版の法」のごく初歩を犯していることのように思うのですが。テキストの出自をきちんと表示することは、読者に対する礼儀ではないでしょうか。
俺も嫌味な人間だよね。しかし、返事はなし。
それはともかく、これはとても面白い小説だ。もともとパルチザンには惹かれるものがあって、坂口尚『石の花』なんかが大好きだった。この本の出版当時、やはりパルチザンに材をとった半村良の小説と一緒に本屋に並んでいたのを見て、迷った挙げ句、半村良の方だけ買ったことを覚えている。でもちょっと期待はずれだったこともあり、なんとなく『戦争の法』の方も読まないままに終わっていた。いやはや、とんだ間違いで、最初からこの本こそを買うべきだった。自分の不勉強が恥ずかしい。文体の吸引力が気持ちよくて、他の作品に読み進もうと思った。
ただ、内容はともかくとして、造本で気になることが多い。作者には失礼かもしれないが、以下そっちの方のみ書く。
- 小説としては本文書体(ほんもんしょたい、と読んでね)が太い。
- 下柱がやたらと大きい。
- 12Q。本文が13Qだから、ちょっと驚くほどの大きさだ。普通は9Qくらい。
- これだけ大きいと、本文が柱に近づいた所で視線が引っ張られてしまう(つまり毎ページごと!)。集中が妨げられる。
- 目についた限りでは印刷標準字体を意識的には使っていない。
- ジャケットのイラストは、ちょっと抽象的すぎないだろうか?
- もうちょっと作品世界をイメージできるような工夫があってもよいと思う。
- どうも、これに限らず読者を作品世界に誘引する仕掛けに不足しているように思うのだが。
総じて言えることは、この本を作った編集者、およびデザイナーの経験の少なさが見て取れるということ。これではちょっと、作者がかわいそうだ。