ogwata2004-10-02

今日は「環8お茶会」だった。環8沿いにある砧公園で毎年春と秋の夜、新旧のシトロエンが50〜60台集まる。僕はその幹事なのだ。今日で13回目だから、始めてからもう6年。シトロエンってのはフランスのマイナーな自動車メーカー。凝った機構のヘンなクルマばかり作って、いつ潰れるかオーナーをやきもきさせているような会社だ。自動車マニアのオフ会だから、走り屋が集まると思うでしょ? 違うんだなあ。


たぶん、環8お茶会の最大の特徴は、その「ゆるさ」だと思う。恋人や奥さんを連れてくる人もいるし、子供が一緒の人も見かける。僕がそうで、うちの娘はこの「しとろえんのおふかい」(と彼女は覚えている)に行くのをとても楽しみにしている。シトロエンを見られる……のではなく、同世代の子供と遊べるからだ(娘は母親を誘うのだが、まだ来たことがない)。たいていは子供好きのお姉さんが巻き込まれて、面倒を見る羽目に陥るので、それをいいことに父親たちは安心してシトロエン談義に花を咲かせることができる。子供たちが歓声を上げてクルマの間を走り回るオフ会というのは、たぶん他の自動車メーカーではないのではなかろうか。数十年も前の古いシトロエンを複数持っていて、週末ごとに油で手を真っ黒にしているような方々(武闘派を自称している)も来てくれるけど、彼等もそんな「ゆるい」雰囲気を楽しんでいるようだ。


なんでこうなるのか? それはシトロエンが、そういうクルマだからだろう。速く走りたいなら他のクルマを選んだ方がいい。シトロエンの最大の美点は速さではなく、乗り心地だ。たいていの女の人は「速さ」は共有できなくとも、「乗り心地」なら共有できる。ようするに『頭文字D』(イニD)と正反対。面白いことにシトロエンのドライバーはサスペンションを固めることより、いかに柔らかくできるか裏技を競う。だけど正直なところよく壊れるし、そうなったら外車だけあって割高になる。そこでオーナーたちは壊れないように熱心に情報交換をし、よく自分で直す。いや、僕は自分ではいじれないので、パーツを安いところで買って、それを持ち込んで直してもらうのだけどね。


最初の頃は名札やペーパーを作ったり、試乗会やら車種ごとにグループ分けしたり、さまざまなことを試したけど、今は何もしない。シトロエンメーリングリスト『Citroenists' Mailing List』(http://citroen.chem.nagoya-u.ac.jp/)で告知をするだけ。参加表明も必要ないし、当日の参加登録などもしない。ただなんとなく集まって、なんとなく帰っていくだけ。来てくれた遠い地方のナンバーを見るにつけ、なるべく長く続けていきたいと思う。


じつを言うと、数年前に止めようと思ったことがある。当時は幹事をML上で募集して、準備会を組織してから告知をしていた。始めた時から僕の頭の中にはコミケット準備会の組織論が強くあり、コミケのように1回ずつ準備組織を立ち上げ直すということに、僕はこだわりたかった。
ところがある時、幹事に応募する人が誰もいないということがあり、仕方ないので僕は今回は中止すると告知した。するとそれまで参加してくれていたある人が、止めるのは惜しいといって、なんと自分で開催日を設定して改めて告知してしまった。僕は感動した。なるほど、自分の小さなこだわりなどもう関係ない。つまり、自分が止めようと思っても止められないところに来てしまったのだ。だったら覚悟を決めた方がいい。
僕は彼等(そう、二人もいたのです)にメールを出し、これからもお茶会を続けたいと思うが、よければ一緒に幹事をやっていただけないかとお願いし、以降は三人で幹事を続けている。もう幹事は募集しない。会の中でなにもイベントをやらず、ただ集まりただ帰るという形になったのも、この時以降だ。それが結局よかったのだと思う。肩の力が抜けて永く続けられる形に落ち着いた。
もっとも、開催告知の最後に以下のようなポリシーを掲げるのだけは、他の幹事にお願いして続けさせてもらっている。

  • 1. 環8お茶会の目的はより多くのシトロエン愛好者が集まり楽しむことです。
  • 2. 環8お茶会の主役は、第1条を共有して集まるすべての参加者です。
  • 3. 環8お茶会の主催は、第1条を遂行する場の提供を目的として、複数のボランティアで構成された「環8お茶会準備会」によります。

アジモフなんですね、これ。さて、現在の僕の悩みは、当分シトロエン以外のクルマには乗り換えられそうもないということなのだが、まあ仕方ありませんな。