こんな夢をみた

男がやってきて、私に以下のようなことを話した。そんな夢。


9月の始め、なんとか省の意向を受けたなんとか協会が、文字コードのエキスパートを招集して、下旬にも官報告知される筈の人名用漢字見直しについて、JIS文字コードとの整合性を検討した。
その場では参加した委員により、以下のような問題が報告された。


  • 人名用漢字には、同じく符号位置だがJIS X 0208の例示字体と一致せず、JIS X 0213: 2004の例示字体と「同じ」文字がある*1
    • 人名用漢字から例を挙げると、二点しんにょうの「辻、逢」、示偏の「祇、榊」、ハの「溢、楢」など。
    • しんにょうの例で説明すると、本来JIS X 0208でもJIS X 0213でも一点と二点は包摂する(区別しない)。
    • ただし、JIS X 0208では「辻」「逢」は一点で例示するのに対し、JIS X 0213:2004では、二点しんにょうで例示している。
  • 人名用漢字には、JIS X 0208ではちょっと違う字体を例示し、UCSとJIS X 0213: 2004ではJIS X 0208で例示した字体の他に新人名用漢字と「同じ」ものが例示されている文字がある。
    • 人名用漢字から例を挙げると、JIS X 0213: 2004の「鴎(品)」「痩(由の真ん中が離れる)」「繋(車の下が山)」など。
    • 「繋」で説明すると、「車」の「繋」はUCS(≒Unicode)では7E4B、車の下が山の「繋」は7E6Bに、それぞれ別に収録されている。
    • 人名用漢字は、車の下が山である7E6Bの「繋」である。
    • しかしJIS X 0208では両者を包摂し、「車」の「繋」を例示している。
  • マイクロソフトJIS X 0213: 2004に対応するのは、2006年末リリース予定のLonghornまで待たないといけない。
    • 「現実」には、規格の例示字体通りの字形を、メーカーは実装することが多い。
    • 上記に挙げたケースでも、JIS X 0208を実装するほとんどのパソコンは(今あなたがみているように)、「辻」「逢」は一点だし、「繋」は「車」の方だ。
    • 命名を受理する役所の窓口の多くは、JIS X 0213: 2004未対応の「JIS X 0208を実装するパソコン*2」が占めると思われる。
    • 一方で、JIS X 0213: 2004にある例示字体と「同じ」字形を出すことができるのは、現状ではMac OS X*3だけ。
    • つまり、多くの窓口のパソコンでは新人名用漢字の全部を扱えるわけではない。
  • よって、命名者がいくら新人名用漢字にある文字を希望しても、現在の状況では全てを受理できないのではないか。


招集されたエキスパートも、腕組みして「困ったことだ」と言い交わすのみであった。もし友人が子供に品の「鴎」なぞを使うと聞いたら、自分は体を張ってでも止めるであろうと痛憤する者もいた。

ついでに言うと、新人名用漢字488文字のうち、前者のケースが87文字、後者が19文字あるように思える。つまり2割ちょっとがまともに使えないということになる。


男はそんなことを話すと、私の前で肩をすくめるのだった。
そんな夢をみた。



そういえば、法務省では答申を発表していますね。

私がみた夢のような会合が、本当に開かれたとするなら、そこでされた指摘を伝え聞いた法務省がどのように受け止め、それをどのように官報告示として結実させるのか、生暖かく見守ることに致しましょう。

*1:JIS文字コード同士の関係は http://internet.watch.impress.co.jp/www/column/ogata/sp18/zu1.htm を参照。この図にあるJIS X 0221-1が別名UCS。

*2:大抵はシフトJIS。そのレパートリはJIS X 0201JIS X 0208だ。

*3:ただしMac OS Xのリリースは2004年改正以前であり、必ずしもJIS X 0213: 2004にある符号位置通りではないことに注意。