「「改定常用漢字表」に関する答申案」を漢字小委員会が承認

23日、文部科学庁舎にて第42回漢字小委員会が開催、改定常用漢字表の答申案が承認された。

2005年からつづけられてきた漢字小委員会での審議はこの日で終了。今後は上位組織である国語分科会での承認を経て、いよいよ文化審議会による答申へとすすむ(6月10日開催予定)*1

この日の配布資料を小熊さんが公開してくれている。

ここで承認されたのは素案であり、本表の使用フォントがまだ最終版ではない。またこの日結論が出なかった以下の点も、漢字ワーキンググループによる最終的な調整にゆだねられた。

  1. 「(付)字体についての解説」の「第2 明朝体と筆写の楷書との関係について」で手偏の撥ねる/撥ねないを掲載するかどうか。
  2. 「Ⅱ 漢字表」のうち「2 本表」備考欄での「*」に付加した参照先ページ数は、現在「第2 明朝体と筆写の楷書との関係について」のみを対象としているが、加えて「第1 明朝体のデザインについて」も対象にするかどうか(具体的には「茨」等が該当)。
  3. 「Ⅱ 漢字表」の「3 付表」で「あま 海女」に「海士」を追加するかどうか。

このうち①についてすこし説明すると、これは同項目の「2 筆写の楷書では、いろいろな書き方のあるもの」のうち「はねるか、とめるかに関する例」に手偏を加えようという案。

1月の審議において、現在の学校教育における厳密すぎる漢字指導の象徴としてこの手偏が取り上げられ、同項に追加する方向で検討されてきた。ところが現行表に掲載されているのは「明朝体では撥ねているが、楷書ではどちらでもよい」例であり、ここに手偏を入れると、結果として「全ての漢字において撥ねる撥ねないはどちらでも良い」との誤解を生み、かえって教育に悪影響を与える懸念が指摘されたという(例えば「干、于」の区別)。

ただし、今これを書くにあたり改めて同項目を見直すと、たしかに(22)ページにあるのは「木、来、糸、牛偏、環」であり、いずれも明朝体では撥ねないものばかりだが、(21)ページには明朝体で撥ねる「切、改、酒、陸、穴冠」が同じ「はねるか、とめるかに関する例」に属する例として載っている。したがって、ここに手偏を加えたから混乱が発生するというのは、いくらなんでも穿ちすぎであるようにも思える。

いずれにせよ、これらの問題は5月19日に開催が予定されている国語分科会までには結論が出される予定。

ところで、この日配付された資料で注目してほしいのは、答申案もさることながら資料1の第41回議事録。その末尾に〈付:配布資料4(要望の多かった「玻・碍・鷹」の扱いについて)の事務局説明〉という一文が加えられている。

「障害・障碍」という表記に関心を持つ人は、ぜひ前回配布の資料4と合わせて読んでほしい。

資料4は事実だけしか記載していないが、この「事務局説明」と読み合わせることで、「障害・障碍・障礙」という表記の歴史的、法的経緯が明らかになるはず。どのような立場をとるにせよ、解決のためには事実を前提とした議論が望まれる。これはそのための基礎資料となるだろう。なお、この表記に関する結論を出す予定の「障がい者制度改革推進本部」へも、これらの資料は渡されるとのこと。

*1:つまり、この日が最終答申日ということになる。