一部委員を入れ替えた新委員会が発足、9月には最終案取りまとめへ

本日、4月28日に第31回漢字小委員会が開催されました。例年4月には一部メンバーを入れ替え、新たに主査と副主査を選出し直すのが習いです。今期のメンバーは以下のとおり。

(五十音順。無印は重任、△は重任で肩書きのみ変更、◎は新任、★は主査、☆は副主査)

前期かぎりで退任したのは甲斐睦朗、松岡和子の両氏。どうしてもここで気になるのは甲斐氏が退任していること。甲斐氏は前年度の審議で、試案の中で発生する字体不統一に関して何度も強硬な反対意見を述べていました。その反対派の一人がいなくなってしまったことになります。これに対して「甲斐氏は外されたのだろう」といった見方は当然出てくると思われます。

もちろん外野でしかない者に真相が分かるはずもありません。しかし前回の議事を踏まえると、事態はむしろ逆なのではないかという気がしています。

前回、国語分科会に提出する試案の承認をめぐり、甲斐氏が(それだけでなく数名の委員も)反対意見を述べて議事が紛糾しました。これに対して林副主査(国語分科会長を兼任)が、「既に詰めの作業に入っているので、もしここでそうした意見を取り上げればパブリックコメントが1年遅れになってしまう。これについては次期のパブリックコメント審査の場で改めて討議することを約束するので、一旦ここは試案を通してまらえまいか」という趣旨の発言をしています*1

もしもこのような発言をしておきながら甲斐委員を外したとすれば、これは体のいい「だまし討ち」ということになります。まさかそこまではしないでしょう。ということは、むしろ甲斐氏の側から何らかの理由で就任を断ったのではないかとの推測が成り立つのです(甲斐氏は国語分科会の委員も兼任しているので、こちらも気になるところ)。

もちろん現段階では「藪の中」にすぎません。まあ、どちらにしても後味は悪いですな。あれほどの議論をしたのだから、正々堂々と意見をたたかわし決着をつけるところを見たかった。本来の役者がそろわなかったのは非常に残念と言うしかありません。

それはともかく、議事を報告しましょう。小熊さんのコメントにもあったように、寄せられたパブリックコメントの総数は約220件とのこと。非常に大きな反響と言うことができ、まずは一安心。これについては、これから以下の5つの柱に分類して遂事討議していくことになります。

  • 基本的な考え方(全体的な枠組みに関わる問題について)
  • 字種(全体の字数の多少について。この分類が最も多かった由)
  • 音訓(新しく追加された音訓について)
  • 字体(不統一について。字種に次いで多かった由)
  • その他(上記4つに関わらない問題)

5〜7月の3回の委員会に分けてこれらの問題を討議、夏休み明けの9月中旬には漢字小委員会としての最終案をまとめ、同月下旬に予定されている国語分科会に提出、そこで承認されれば2回目のパブリックコメントにすすむことになります。

なお、同時に「資料3」として「意見募集で寄せられた意見例(字種関連)」が配布されました。これはいずれも5件以上の同意見があった字をまとめたものであるとか。これについては小熊さんが公開してくれたものを参照するか、追って文化庁から公開されるはずの資料をお待ちください。

*1:第30回議事録のp.5を参照。