金谷治先生が亡くなった

新聞を眺めていたら、ふと死亡欄に目が止まった。金谷治先生の名前があった。先生などと言ってみたけど面識はない。だけどそうでも言わないと落ち着かない。ご存知の方も多いだろう、中国思想史上の数多くの古典を訳された人として、つとに有名な方だ。

東北大名誉教授の金谷治さん死去


今までいったい何冊本を買ったのだろう。ほとんどは1回読めば、あとは忘れるだけだ。今手元に金谷先生が訳注をほどこされた岩波文庫版「論語 (岩波文庫 青202-1)」がある。これだけはもう何回も読んでいる。たしか大学1年か2年の時に町田の有隣堂で買った。つまり1980年前後。でも残念ながら内容が身についた訳でもない。読み下し文のリズムが気持ち良いので、疲れてどうしようもないとき元気回復のために開く。だから、いつまでたっても礼も楽も身に付かない。でも「徳は孤ならず、必ず隣あり」*1 *2なんてのを見つけると、もうちょっと頑張ろうかと思うじゃないですか。

後になって吉川幸次郎訳の「論語〈上〉―中国古典選 (朝日選書)」「論語〈下〉―中国古典選 (朝日選書)」も読んだけど、確かにこちらの方がじっくり解説してくれて理解には助かった。でも何も考えずにリズムを楽しむなら、やっぱり金谷訳の方だと思っている。なんたって薄くてハンディなのがいいですよ。

岩波文庫のを買ったのは、たしか大学の先輩が「金谷さんのが一番読みやすい」と推したからではなかったっけ。論語の次に老子にとりかかっていると聞いたけど、いくら待っても全然出ないので、あれは何かの間違いだったのかと思っていたら、つい数年前に講談社学術文庫から出たのだった。

……今見直したら、「老子 (講談社学術文庫)」って1997年、もう9年も前に出てますね。それに今アマゾンで見直して分かったけど、件の「論語」も改訂版が1999年に出ている……。いやもう、まさに「逝く者は斯くの如きか」でございます。

ともあれ、金谷先生のご冥福をお祈りいたします。

*1:すいません、最初は「狐」になってました。なんでキツネに徳があるんだ。ご指摘くださった豊島さん、ありがとうございます。

*2:と思ったら「狐」じゃなくて「弧」(circle)だっだでしょとのご指摘あり。恥の上塗りでございました。