PAGE2006におけるプレゼンテーションの、ちょっとした言い訳

ついでと言ってはナニだが、PAGE2006で僕がしたプレゼンテーションについて、ちょっとエクスキューズしておきたい。



PAGE2006では、JIS文字コードと国語施策の歴史と題し、そこで共通して使われている文字モデルについてで解説を試みた。ただ、ここで説明したモデルは、じつは分かりやすさを優先したために、きれいにまとめすぎた嫌いがある。まず簡単におさらいすると、僕は漢字における「文字の違い」というものを、「厩」という漢字を例にとって、大きい順から

  • 符号位置(包摂範囲)の違い
  • 字体の違い
  • 字形の違い

の3段階に分けたてみせたわけです。こうした説明に説得力を持たせるためには、デジタルフォントにおいて各々のレベルで複数の異体字が存在することが前提になるのだけれど、じつはそんなにたくさんの異体字を持つ字種なんて滅多にないんですね。ましてや、今回お題の表外漢字字体表1,022字の中で見つけるのは至難の業。今回のプレゼンテーションが成立し得たのは、「厩」という滅法異体字が多い字種がなかりせば、到底無理だった訳です。


たとえば異体字が多い字種と言えば「剣」ですが、これは符号位置の違う異体字は多いけど、「剣」そのものには字体差、字形差はない。なんたって常用漢字ですから、字形レベルではすでに収斂しちゃっている訳です。「逸」なんていうのも同じ。CJKともに「免」のデザイン(足の出方、点の有無)としんにょうの点の数は、まあ見事に対応してて(少なくともデジタルフォントでは)揺れはない。


このように、現実には字体の違いが複数あるけど、字形の違いはないとか、符号位置の違いは複数あるけど、字体・字形の違いはないなんてのが圧倒的に多い訳です。とくに気を付けるべきは符号位置の違いであって、前項でも述べたように、本来包摂すべき字体が分離されて収録される「恣意性」が紛れ込む場合が間々あることをご承知おきください。


とはいえ、僕のこの階層モデルが、漢字が共通して持つモデルを視覚化しようとしたものであることに変わりはありません。でも、何にでも効く万能薬ではないよということですね。