印刷の立ち会いに行ってきた

持ち帰ったカバーと帯の刷り出し


前日さんざんケチな文句を付けたが、結果からすると上々、懸念は杞憂に終わった。色校の時、どうも薄く白っぽく刷り上がり、「なんだこりゃ?」状態だった特色の再現も、行って一目見るなり「素晴らしい!」と声を上げるほどのものだった。


こうなると、どうして色校があの程度のクオリティだったのかという疑問が残る。東京の支社から沼津まで出向いてくれた営業氏は、校正機は小さいのでどうしても印圧が低くなり、したがって色も薄くなりがちと説明していたが、悪いがそれはちょっと眉唾だ。


枚葉機である校正機は、輪転機である本機より再現の自由度は広いはずだ。だから校正機ではどのようにでも色は出せる訳で、実際には校正機で出した色をきちんと本機でも再現できるかどうかが、その印刷会社の腕の見せ所のはず。となれば今回の色校の仕上がりは校正機の印圧云々というよりは、むしろ校正機のオペレーターの未熟さを物語っているのではないだろうか。


それはともかく、最後の微妙な色の指示は、持参したサンプルを機長(印刷機の職長をこう言う)に見せて合わせてもらったのだが、見るなりあっというまに調整してそっくりの色を出してくれた。見当のわずかなずれも、指さして言うするだけで、すぐに直してくれる。的確な仕事ぶりで良い機長に当たってラッキーだった。


もともと印刷の立ち会いとは「行く」と言い出しただけで、半分こちらの仕事は終わったようなものなのだ。デザイナーなり編集者なりが来るというだけで、印刷会社は構えてくれる。それで仕上がりが良くなるのではと思い、なるべく時間を割いて行くようにしている。だから実際に行ったら、なるべく余計なことを言って邪魔をしないようにしていたのだが、今回デザイナーとして立ち会って、自分のイメージの通りの色になって出てくるのを体験すると、もっとあれこれ現場の方とコミュニケーションをとった方がよいのかもと思えてきた。


ともあれ、収穫の多い沼津行きだった。立ち会いが終わり、「ありがとうございました。どうかよろしくお願いします」と言った際、にっこり笑った機長の顔が忘れられない。